2011年1月15日土曜日

悲惨な家庭ー20

医療箱を探し箱を開けるが此れと言った薬は無i。ヨード液があったのでそれをたっぷり両甲の上に垂らした。しみる痛さが酷かったが焼かれるよりましだった。真っ赤に爛れた肉がむき出しになっていた。軟膏があったのでそれを塗りガーゼを当てた。包帯はなかった箪笥の引き出しにあった仕立て残りの白い布切れを幾筋にも裂いて包帯代わりにして巻いた。両足の事とて歩くのに大変困った。母達が帰ってきた。足を見てどうしたのかとしっこく聞いた、曖昧な事を言って誤魔化した。母は何時もの悪戯でのかすり傷ぐらいに思ったのであろう。あまり詮索はしなかった、歩くのに我慢して痛くないように見せかけるのに苦労した。女中も帰ってきた、また悪戯したのかと思ったのだろう嫌な顔して僕を見た。此のやろうお前のためにこんな目に遭ったのだぞと、大声で叫びたかった。また傷の治療の付け替えに苦労した。誰も居ない時を見計らってこっそり治療した。ガーゼが肉にこびり付いている離す時は飛び上がる程痛かった。女中はそれをこっそり見ていたのか、次からは親切に手伝ってくれた。傷跡を見てこんなに酷かったのかと、親に相談して病院に連れて行って貰いなさいと言った。僕は其れは絶対に出来ない、解らない様にこっそり手伝ってくれと懇願した。其の時女中は家の中の奇妙な関係に気づいたのであった。其れからは女中の態度が急に変わり僕にそれくれとなく兄に感ずかれぬように親切に振舞って呉れた。一週間ぐらいで包帯は要らなくなった、しかしむき出しにしていれば傷の酷さが解る。ガーゼを当ててテープで止めた。瘡蓋が出来て暫らく立った、剥がれそうになったのでゆっくりと剥がした。ちょっと血が出たが、つるつるした光った皮膚が現れた。其の頃から兄を憎みだした、其の憎しみは今迄の暴力に対する仕返しを考えるようになった、大きくなったら殺してやろうと思った。そして今度暴力を振るう事があったら絶対に対抗するぞ、殺されるかも知れなくても抵抗する事を心に誓った。6年生になった兄は上級学校の受験の準備の勉強に余念が無かった。暴力を振る事は少なく無くなった。

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