2011年1月17日月曜日
混乱した青春ー1
新しい学生服は国防色の広い襟であった、それにゲートルを巻いて通学するのだ。始めはゲートルの巻き方が解らず大変苦労したものであった。入学して2学期に入ってすぐだった、陸軍幼年学校入学試験に応募の張り紙が出た。平均点75以上とあった、かろうじて受ける資格がある。職員室に行って担任の先生に受験したいと相談した。受験するのは君の覚悟次第だ、然し君の元気は人一倍だが体格が痩せ気味だ、今から運動して食事の好き嫌いをなくし努力すればまだ何とか成るだろう。何とも頼りない返事であった。受験用紙を渡され書き込む要領を説明され両親の承諾印を押してくるように言われた。家に帰り用紙に書き込み、軍人に成りたい幼年学校に受験すると言って書いた用紙を母に見せた。其の晩父は僕に向かって良くぞ決心した、と言って初めて僕を褒めてくれた、父は承諾印を喜んで押してくれた。試験場はたしか久留米市であったと思う、其の日は父がわざわざ連れて行った。後にも先にも父の愛情溢れる行為はただ此の一日であった。試験の内容は割合に易しかった、ただ歴史の問題が殆ど駄目に近かった。後三条天皇の御実績をかけでは全く知らなかった。過去にこういう事があったのを思い出した。陸軍士官学校の試験にやはり天皇のご実績の問題が出た。ある学生が其の問題を知っていたのか知らなかったのか、天皇の御実績を書くのは恐れ多い事ですと答えに書いたそうだ、そしたら試験は満点をもらい無事合格したと言う。僕もそう書こうかと一瞬脳裏に走ったが、他の問題が解けて居ないのにそれだけ尤もらしいのでは変になるので何も書かずにいた。試験の結果発表はなく採用者は家に通知すると言う事だった。待てど暮らせど何の音沙汰もなかった。近所の噂で僕と一緒に受験した友達の家に憲兵が来て色々調査して言ったそうだ。近所の評判も聞いて歩いたとか言っていた。そして解った友達は合格したのだ、熊本の陸軍幼年学校に入校する事になった。一年生の合格者は彼一人であった。残念で堪らなかった。来年も出来る事だ一生懸命に頑張る事を決意して来年を待つ事にした。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿