2011年1月15日土曜日

悲惨な家庭ー19

今度来た女中は兄を好いて居る様に見えた。兄の暴力は少なくなったがビンタは時々飛んできた。女中はそれを見て兄さんの言う事を聞いて悪戯は止めなさいと、その度僕に言い聞かせるのだった。其の日は何も悪い事はしていないのに、学校から帰ってカバンを投げ出すなとビンタが飛んだ。何時も投げ出していたがビンタなどなかった。今日に限ってビンタをするのは女中が何かを告げ口したと思った、女中に其の事を言いお前は兄さんを好きなのかと詰った。彼女は途端に真っ赤になり馬鹿と言って泣き出した。兄は其れを見て僕を睨み付けた、恐ろしい顔だった。其の日は何事も無く終わった。其のあくる日は休みで彼女は実家に帰り、母と姉達は親戚を尋ね家には兄と二人になっていた。僕は窯の残り火でサツマイモを焼いて食べていた。芋の匂いを嗅ぎつけたのか兄がやって来た。俺の芋はあるかと言った、ないと言うと焼けと言う、サツマイモを二つ窯の中に入れた。薪をいれ火をつけた。炎が辺りを暖めた、寒い日だったので体が温まった。兄が口を開いた、昨日女中さんに何を言ったのかと怖い顔して聞いた。何も気に障ることは言わなかったと言ったが、嘘を言うなとしっこく問い詰めた。黙っていると突然足を前に出せと言う、何をするのかと恐る恐る前に差し出した。足の甲に残り火の炭を置いた。熱かったのと吃驚したのに瞬時足をに引込めた。 なにをするじっとして居るのだ、ビンタが飛んで火箸で頭をビシャと叩かれた。ビンタはあまり堪えなかったが、頭にきた火箸は以前金棒で痛めた額を叩いた、頭蓋骨にヒビが入った様なショックが走った。言う事を聞かなかったら、火箸が目に突き刺さるかと思った。目を閉じじっとしていた、いきなり強烈な熱さが足の甲を走った。涙がボロボロ出たそれでも耐えた、何十秒か過ぎただろう足は麻痺したのか熱さは弱くなくなった。そっと足の甲を見ると炭は黒くなりかけ白い煙が立っていた。涙がとめどなく流れ泣いていると別の方をだせといった、観念して差し出した。強烈な熱さだ目を閉じてじっと耐えた。兄は窯の中から芋を取り出し新聞紙に包んで去っていった。やっと仕置きから開放されたが両足の痛みは酷く地面を這って居間に這い上がるのがやっとだった。

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